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2008年10月15日 (水)

心造り

引っ越し荷作りは、業者に任せる。

だから私は、これからの何日間か、で。

 

心造りに集中する。

 

押し込めないと、24時間が切なくなる。 

紐解けば溢れ出て、押し戻されてしまう。

流されて崩れて、夕食の支度すら出来ない。

 

家具の配置、新しいカーテンの柄、荷解きの段取りを考えて。

ペダルを漕ぐつま先に、意識を集中させチカラを入れる。

通いなれた道端の縁石に、心を奪われないように。

園庭でのざわめきに、埋もれてしまわないように。

路地裏の金木犀に、立ち止まらないように。

受け容れられた日々を、振り返らないように。 

 

奪われて立ち止まり、埋もれて振り返れば。

サヨナラを認めるのと、同じ。

 

おむすびを並んで食べた、駅のホーム。

泣きながらムスコを連れ帰った、あの道。

時間を忘れ座りこんで話続けた、お砂場。

お気に入りのパン屋と、通いなれたビデオ屋。

半分しか溜まってないスタンプカードと、使い込んだクリーニングの会員証。

交差点で、すれ違いながら交わす「おはよう」と「またね」の言葉。

近所のスーパーでの立ち話は、広がる輪。  

そこに、ここに、いつか懐かしむであろう場所で、今。

私は、過ごしている。

   

送別会、さよなら会、泣けと言わんばかりに、次々招待状が届く。

それらに、涙を見せず出席し礼を述べ、花を受け取る。

「元気でね」なんて言葉は、「二度と会えない」と同じかもしれない。

「寂しくなるよ」なんて言葉は、私の言いたい台詞。

 

「ねえねえ、明日は予定空いてる? 家、行っていい?」

聞かれれば聞かれる程に、会えなくなる日を急ぐようで落ち込んだ。

「なあなあ、次は、どこ行こか? 梅田? それとも焼き鳥行っとく?」

言われれば言われる程に、さよならの準備みたいで悲しかった。

 

だけど。

「これからはスーパーで、ニコちゃんマークのチャリを見かけなくんねんなあ」

「ベランダ越しに、ムスコちゃんの、行ってらっしゃい~、を聞けなくなんねんなあ」

「公園、行っても、おはよー、って言えなくなるねんもん、なあ・・・」

「もう、あの窓には、カーテン、無くなるねんなあ・・・」

   

「毎朝、登園の通り道に、ツマさんの車が停めてあるやろ、

 それが、後少しでなくなるんだ、と思ったら、朝から泣けてきた」 

 

 

ああ、そやねん。

ごめん、そやった・・・、残して行くより、残されるほうが。 

きっと私より、寂しいねん。

 

日常から知ってる人が、消える違和感と。

新しい場所で、懸命に居場所を探す私とでは。

消えた私を、残した日常の風景の方が、刹那い。

カーテンの消えた窓、ぽっかり空いた駐車場、馴染んだメールの通知音。

横並びの立ち位置、ヒトツだけ空いた席。

 

新しい家、新しい生活、新しい、もしかして友人を得る私と。

日常の生活から、失う風景、失う日常、失う私に。

さよならの言葉を言いたくなくて、きっと。

「今度、いつ会える?」 と。

「次、どこ行こか?」 と。

私との思い出作りは、彼女達の想い出作り。

 

送別会でも、さよなら会でも、泣かない私を取り囲んで。

目を赤くし潤ませて、今にも大粒の涙を溢しそうな友達に。

「泣かんといて、寂しくなるから」 は、私だけの思い。

 

いつか、きっと彼女達の生活から、忘れ去られるだろう今を。

私は切り取ろうとし、彼女達は綴ろうとする。

  

次の送別会で、私はきっと泣く。

多くの友人に囲まれて、彼女達と一緒に泣く。

そして、一緒に泣けたら、この冬の約束を必ずしよう。

寒くなって雪が降ったら会えるよ、と。

また、笑顔で必ず会える、と。

 

泣く時のハンカチは、二枚。
一枚は、涙用。

もう一枚は、友達用。

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コメント

せつないなぁ~・・・
しょうがないからいっぱい泣いて明日に向かって生きてください。
泣いているツマは間違いなく、イエリーナに違いない。
けして竹城ではあるまい。

投稿: クミ | 2008年10月15日 (水) 21時50分

ハンカチで鼻水するのは、勘弁して(苦笑)

出会いがあれば、別れもある。

思い出の彼方に消えても、それはそれ

バーチャルの世界なら、うちらが居るわけで、
現実の世界には、家族友人知人顔見知りがいるわけです。

tumaさんより、息子氏の次なるステップへ人脈形成に必要な旅立ちなんだから、そのエリアを確立する為に、気合いれなくっちゃな

投稿: 通りすがりの名古屋人 | 2008年10月16日 (木) 09時54分

自分一人なら、身軽に飛んでいけるけど、子供と作り上げた環境とさよならするの辛いですよね。。でも、軸が家族だから、家族であり続ける為の旅路ですもんね。きっと、新しい素晴らしい出会いが、両手広げて待ってます!家も、来月近所に引越し検討中。私が舵取りの家族は環境換える勇気なし。。

投稿: 77 | 2008年10月16日 (木) 13時18分

クミさん>そやね、決して。
うおーん、うおーん、てな号泣ではなく。
 
ハンカチを握り締め、楚々と泣く私で居たいと思っていますとも! ええ、ええ。
 

投稿: tuma | 2008年10月17日 (金) 12時26分

名古屋人さん>そやね。
 
いつも思う。
バーチャの世界の、皆の衆とは、「切っても切れない」でいいねんなあ、と。
 
あの世に行くまで、きっと付き合えるんだよなあ、なんて、ね(笑
 
実際に、「出合わないからこそ、出会ったまま」の付き合いもあるんだ、と思うよ。
 
リアルの世界の付き合いも、人それぞれ。
だからこそ、バーチャの付き合い方も、それぞれ・・・、私はどっちにも恵まれてる、といつも感謝してます、はい。

投稿: tuma | 2008年10月17日 (金) 12時28分

77さん>ありゃ、引っ越しか。
 
舵取りも大変だな。
けど、引っ越しを決めた理由もあろうし、それが家族にとって一番!なら、それで正解だろ。
 
舵取り人としては、思い艪だと思うケド、ガンバってな~~!

投稿: tuma | 2008年10月17日 (金) 12時29分

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